2017年10月29日日曜日

森下幹人が映画「手紙は憶えている」を語る

森下幹人がこれまで見た映画の中にはナチスのホロコーストや終戦直前のナチスの将官たちの様子などを描いた作品がありましたが戦慄しながらエンディングを迎えたのは「手紙は憶えている」が初めてです。

日本では2016年に公開された「手紙は憶えている」はカナダとドイツの共同作品で、行方不明になった娘を見つけるために奔走する母親が主人公の「白い沈黙」という映画の監督をつとめたアトム・エゴヤン氏の指揮によって制作されました。主演であるクリストファー・プラマーは「人生はビギナーズ」で史上最高齢のアカデミー助演男優賞を獲得した実力者です。

彼の演技は「手紙は憶えている」でもいかんなく発揮されています。
クリストファー・プラマーが扮する主人公のゼブは高齢者ケア施設で生活している90歳のユダヤ人です。

彼は第二次世界大戦中にアウシュビッツの虐殺から奇跡的に生還を果たしますが現在は最愛の妻の死を覚えていられないほど認知症が進行した老人でしかありませんでした。そんな彼はある日同じ施設にいる友人でありアウシュビッツの生還者でもあるマックスから1通の手紙を受け取ります。

そこにはアウシュビッツで2人の家族を殺したナチスの兵士に関する内容と体が不自由になってしまったゆえに復習が出来ないマックスの無念が綴られていました。心を打たれたゼブは手紙とかすかな記憶を頼りに復讐の旅に行きます。

ナチスと復讐をモチーフにした作品は以前ジャーナリストが主人公の映画で見た事があるので自然と受け入れる事ができましたが森下幹人としてはゼブの動向にハラハラしっぱなしでした。その緊張は美しい色彩を放つ自然と道中で出会う人々でも和らぐ事はなく、心から頼れたのはマックスの手紙だけでした。

だからこそ旅の執着地点で味わう事になる絶望と戦慄は深いものになりました。
「手紙は憶えている」、最後まで見た今となってはそのタイトルの意味に考えさせられます。